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September 22, 2004

自分の妹に「性器切除」を強制した少年が逃走《ありがた迷惑さ1》

FGMってご存知だろうか? Female Genital Mutilation の略語である。「女子割礼 (female circumcision)」と呼ばれることもあるが、ほとんどの場合は「割礼」という言葉をはるかに超えた「切除」が行われる。

FGMに関しては、いくつかのサイトで真剣に取り上げられているが、「仮想・医療人類学辞典」サイトの「女性性器切除」のページには、以下のような記述がある。

FGMの施術を受け、現在、FGM廃絶の廃絶の国際運動をおこなっているワリス(1999)によると、アフリカ大陸を中心に約28カ国の地域でおこなわれ、国連の推定では毎年200万人の女性(少女)が、この手術の対象者となり、過去にFGMを受けた女性は累計で13億人になるという。
FGMが行われている国を示すマップ

FGMが行われている国を示すマップ(World Incidence of Genital Mutilationサイトより)
赤系統の色が濃いほど、FGMが頻繁に行われている。

アフリカ各国のニュースが掲載されているallAfrica.comでも、FGMに関するニュースをときどき目にする。9月20日付けのニュースにも、

Man On the Run After Forced Circumcision Saga - Nairobi

という記事があった。見出しを直訳すると、「割礼のしきたりを強要した男が逃走」となる。記事の内容を読むと、「ぬるい」感じのする見出しである。まず、割礼と聞いて日本人の多くは、男性が受ける割礼しか思い浮かばない。おそらく、この見出しを見ても、嫌がる男性に無理やリ割礼を受けさせた男が逃走したのか・・・くらいにしか思えないだろう。

が、実際は、単なる割礼ではなく FGM を強要したのである。しかも、その相手は自分の妹たちだった。

逃走した男は自分自身も既に割礼を受けている。以前、このブログで取り上げたように、男子の割礼でも手術に失敗したり、自分でカミソリを持って割礼しようとして失敗し、大怪我したり、死に至ったりすることもある(詳細は、当ブログの関連記事を参照)。

だが、男子の割礼と女子の割礼とでは、その目的、物理的規模・範囲に大きな違いがある。男性の割礼は単に性器の皮を切除するだけだが、「女子割礼」では、多くの場合、外性器そのものを切除してしまう。よって、「割礼 (circumcision)」という表現は婉曲すぎるのだ。

FGM廃絶に取り組んでいる「FGM廃絶を支援する女たちの会(WAAF)」のサイトには、FGMの4つのタイプが説明されている。かなり生々しい説明だが、関心を持たれた方は、ぜひこちらをご覧いただきたい。

さて、Man On the Run After Forced Circumcision Saga - Nairobiの記事によると、逃走したのは18歳の少年である。自分の実の妹二人(14歳と16歳)に FGM を強制的に受けさせた後、逃走したという。ケニアでは、FGM の強制は違法である。

彼は女性施術師数名を家に呼んで、妹らを縛った上で、強制的に施術させた。しかし、その施術内容は、悪意を持って行ったとしか思えないほど、ひどいものだった。Nairobi Women's Hospital に運ばれたが、担当医師が筆舌に尽くしがたいと表現するほどの損傷を被っており、「再建手術」が必要だという。

彼女らの母親はFGMを受けさせないという決断を下していたのだが、少年はそのことに大きな不満を持っていたことから犯行に及んだという。

FGMが何のために行われるかについては、さまざまな説明があるようだが、一番の直接的な目的は、女性に性行為を快楽と感じさせない(むしろ苦痛と感じさせる)ことにあるようだ。女性にとっては、子作りのためだけの行為となる。そのことによって貞操を守らせようというのが最終的な目的だと思われる。一方、男性側は快楽を奪われない。自分は楽しんでいいのだ。

当然のことながら、その「不公平さ」は満点の10ポイントに相当する。しかし、ここでは「不公平さ」という尺度で評点を付けるのはやめておく。

FGMは、長きに渡ってアフリカ諸国の風習の1つであり続けてきた。よその文化圏の人間が特定地域の風習が奇異あるいは不合理に見えるからといって干渉するのは、多くの場合、「余計なお世話」である。逃走した18歳の少年にしても、FGMの強制を禁止する法律は「余計なお世話」と感じているのだろう。

日本各地で行われている祭りで死者が出るからといって、それを廃止しようなんてことを言い出したら猛反対に遭うだろう。

しかし、廃絶しなければならない悪しき風習もあるのだ。まさしくFGMがその典型である。よって、FGM廃絶への取り組みは、決して「余計なお世話」ではない。ありがた迷惑度換算で、最低点の1に相当する。

ありがた迷惑さ1■□□□□□□□□□


ただし、一夫多妻制も同じ延長線上にあると思うのだが、これを廃絶しろという外部からの干渉はいまのところ、あまり聞いたことがない。ブッシュさんもそこまで干渉するつもりはなかっただろうし。


  • 関連書籍: ドキュメント 女子割礼集英社新書

    内容(「BOOK」データベースより)
    女子割礼/女子性器切除という風習がある。アフリカ大陸を中心に、成人に達したあかし※として女性外性器の一部またはほとんどを切除したり縫合するものだ。この風習が根づいている国々ではじつに90%以上の女性が割礼を受けている。割礼の際の激しい苦痛はもちろん、感染症、切除後の癒着などによる多くの障害の発生、結婚や出産時のさらなる苦痛と危険など、女性の一生に暗い影をおとし国際的にも批判の多いこの風習だが、なぜ今も残っているのだろうか。気鋭のフォトジャーナリストである著者は、エジプト、シエラレオネ、ジブチなど6か国を3回にわたって取材。割礼を受けた人たち、廃絶運動に携わる人、また推進派などにインタビューを重ね、その実態を探ってきた。これはその貴重な記録である。

    ※なんでも評点注:成人の明かしとは限らない。幼女やローティーンの女子が対象となる場合もある。


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2004 09 22 | 固定リンク

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投稿者: diummawl-online (Jul 14, 2010 8:42:55 AM)

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