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August 17, 2004

友達に裏切られたSasser作者の少年の素顔《びくびく度3》

Sasserを始め、2004年度上半期に流行したウィルスの70%は、たった一人のドイツ人少年が作成したものであった。その詳細は、既にメディアやあちこちのWebサイトで報じられているので、ここでは触れない。

18歳のスベン・ジャスチャン少年(犯行当時は17歳)は、ドイツの田舎の村で暮らしている。彼の素顔に迫る記事を IOL - Sci-Tech で見つけたので、そのあらましを日本語化してみようと思う。このブログの海外ソースの記事の大半がそうであるように、この記事は翻訳ではなく、ソース記事の情報を取捨選択した上、筆者の主観を交えて書いていることを最初にご了承願いたい。

■ 平和な村

記者マルコム・マカリスタ・ホールは、林と畑が織り成す風景が延々と続くドイツ北部の片田舎に取材に出かけた。ちっぽけなヴァフェンセン村のはずれに立つシンプルな赤レンガ造り二階建ての家がスベンの住む家である。

ヴァフェンセン村にまさかあんな大騒動が巻き起こるとは、村民の誰一人として想像したこともなかった。閑散とした道。乳母車を押して歩く母親。庭の芝を刈っている男性。柵の中に2頭の馬。まさか、こんなに静かで思わず眠りに誘われてしまいそうな村に世界最悪級のハッカーが暮らしていたとは。

しかし、今年の5月、この村始まって以来の狂乱が巻き起こったのだ。新聞記者やTVスタッフが大挙して押しかけてきたあの光景は、村民たちには現実のものと思えぬほどだった。

ホール記者がスベンの家にたどり着くと、Tシャツを着た男性が古いベンツを車庫からバックで出そうとしているところだった。

男性は、車から降りると、まったく微笑まずに口を開いた。「スベンは、友達の一人に裏切られたんだ」

この男性がスベンの母親の内縁の夫であることもホール記者は把握済みだった。スベンは、この家で、母親、4人の兄弟、そして血のつながりのない「父」と一緒に暮らしているのだ。

ホール記者は、スベンの家族がドイツのメディアグループと契約していることを既に知っていたので、NOと言われるのを覚悟の上で、スベンと話してみたいと単刀直入に切り出した。

「それはできないね。私らは別の新聞と約束してるんだ。だから、スベンに会わせることはできないよ」

「スベンは元気にしてますか?」
「もちろんだよ。元気でない理由があるのかい?」

そのとき、この村にそう遠くないベルデン市、そして州都のハノーバーでは、刑事たちと検察官たちがスベンを告発する準備を急いでいるところだった。有罪となれば、最長で5年間の刑務所暮らしが待っている。スベンが元気でないかもしれない理由はちゃんとあったのだ。

■ スベンの部屋

「彼はコンピュータお宅なんだ」

スベンの部屋は、この家の地階部分にある。10代の少年としては典型的な散らかり具合の部屋である。何の変哲もないPCが置いてある。スベンは近隣の職業訓練校で IT を学んでいる。PCを自分で改造しているらしく、パネルが取り外されていて、マザーボードが見えていた。

■ 急展開

一気に蔓延警察と検察の主張によれば、スベンは、4月のある時期に、別のハッカーのWebサイトからウィルスの基本コードをダウンロードした。それをもとにして、最終的にはエディタ画面で15ページに達する複雑なウィルスを開発していった。自分の誕生日(4月29日)の夜遅く、スベンは「送信」ボタンをクリックして、ウィルスをWebに送り込んだのである。

ホール記者の記事には、その後どのような被害を招いたかについても詳細に書かれているが、ここでは割愛する。

被害が拡大した後、当初は、ロシアのハッカーギャングの仕業ではないかという疑いが持たれていたが、Microsoftがハッカーの身元特定に繋がる情報の提供者に最大額25万ドルを支払うという告知を行ったことで、事態が急転した。

■ 密告者現る

5月5日に、ミュンヘンのMicrosoftに電話が入った。電話の主は、まず懸賞金の詳細について確認した後、Microsoftが求めている情報を自分が提供できる立場にあることを明かした。翌日の夜、ミュンヘンから数百キロ離れた北ドイツのブレーメンのホテルに、情報提供者がもう一人の人物を伴って現れた。情報提供者は、Microsoftの担当者にSasserのソースコードを手渡し、そして、ハッカーの身元を告げた。

その後、この情報提供者は、スベンと同じ職業訓練校に通っている10代の生徒であることが判明した。

検察官のヘルムト・トレントマンは、「スベンの友人の一人が彼を裏切ったのだ」と明言している。しかも、スベンはその訓練校でウィルス作成に最初に手を染めたのだという。情報提供者はスベンと同じクラスではなかったが、隣のクラスだった。今年の始めごろ、スベンが作成したウィルスコードが隣の教室のPCを破壊するという事件があったという。

■ 陥落

ハノーバーの警察当局は捜索令状を得て、5月7日の正午前後にスベンの家を訪問した。「スベンはわれわれを見て驚いていた」と担当警部の一人がそのときのことを思い出して言う。

「彼は、未成年ながらも自分がどういうことをしているのか自分でわかっているつもりだったのだろうが、自分の作ったウィルスが世界中にここまで込み入った被害を及ぼすとは認識していなかったのではないか。自分のやったことがどういう影響を生むかを現実的に認識していたとは思えない」

警察はスベンのコンピュータを押収し、ルーテンブルグの警察署でスベンを数時間に渡って取り調べた。彼は非常に協力的だったという。

スベンが作成したのがSasserワームにとどまらなかったのは、これまでに報道されてきたとおりである。

■ 天才にあらず

たった1人の少年が自分の寝室に置かれた安物のコンピュータから世界を揺るがしたのは、まさに驚くべき事実だが、スベンにITを教えていた教師によると、彼は天才というほどでもないという。

「彼は、教室では真面目にしているし、テストの成績も良好です。コンピュータお宅であることは確かですがね」とその教師は笑みを交えて言う。「でも、彼は特に優秀な生徒ではなく、彼より学力の優れた生徒はほかにたくさんいますよ」

ベルデンの検察官は、「彼は天才じゃない。アインシュタインの再来なわけもない。まるで天才であるかのように輝く一瞬があったということでしょう」と皮肉交じりに言う。

さて、筆者が思うに、スベンは決してびくびくしながらウィルスを撒き散らしていたのではなさそうだ。警察が踏み込んだときに驚いたのも、予想外だったからではないか。取調べに協力的だったのもそうだ。

担当警部の1人が言っているように、彼には自分のやったことが引き起こした結果の深刻さが現実のものと認識できていなかったのだろう。よって、スベンが感じていた「びくびく度」はかなり低いと思われる。せいぜい3ポイントくらいにしか評価できないのではないか。

彼に罪の意識は薄く、実際問題、犯行当時の年齢が18歳未満であり、重い刑罰が課せられることはないだろう。民事での損害賠償がどうなるかは別として(天才でないと言われすぎなのは、彼にしたら後々困ったことになるかも。天才という風評が立っていれば、逆に未来が開けるかもしれないのだが)。


■ News Source - IOL - Sci-Tech - Closing in on a dangerous hacker

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コメント

なるほど。確かに。天才・・・とは、周りに認められなければいけないのですね。でも、皮肉でも、一瞬輝くことは、誰にでも持ってるけど、出せない所ですよね・・・。難しいです。さきゅら

投稿者: sachura (Aug 17, 2004 1:39:47 AM)

sachuraさん

コメントありがとうございます。最近、なぜかアクセスが増えるにつれてコメントが減っていたので久しぶりのコメントだったりします。

一瞬輝くだけでも一生食べていけるほど儲ければいい場合もありますね。いわゆる一発屋というやつ(笑)。スベン君の場合は、ネガティブな輝きだったのが問題ですね。

投稿者: miccckey (Aug 17, 2004 2:40:38 AM)

トラックバックありがとうございます。
エキサイトブログ以外の方が見てくださってるとは露知らず^^
Sasserをばら撒いた少年にそういう背景があったとは知りませんでした。
ネットの中に潜む危険は、意外とそういうものなのかもしれませんね。

「知らない」というのは、時に幸せですが、
時にとんでもない不幸にもなるものですね。

彼の「天才でない」かもしれないけど持っているであろう未知の能力が
良い方向に花開く事を願います。

投稿者: Harvestrain (Aug 17, 2004 3:15:37 PM)

Harvestrainさん

コメントありがとうございます。

スベン少年を天才ではないという大人が多いのは、彼が若者の間で
英雄視されるのを防ぎたいという意図があるからかもしれません。
記事を書いた後で気づいたんですが。

p.s. Harvestrainさんのブログは写真がきれいですね。

投稿者: miccckey (Aug 17, 2004 3:22:16 PM)

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