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July 31, 2004

汚物の中で耐え続けた新しい命《けなげさ10》

妊婦なんて一人もいなかったはずの村の住民たちは、ある日の午後、戸外のどこかから赤ん坊の泣き声が聞こえてくるのに気づいた。赤ん坊を連れた訪問者がやってきたのだろうか。

住人たちは、外に出て泣き声の元を探した。屋外に落とし式トイレが設置されているのだが、どうやらその中から聞こえてくる。

青空の下に屋外トイレ住民たちが屋外トイレに駆けつけて戸を開けてみると、そこに赤ん坊の姿はなく、便器の穴の奥深くから泣き声が聞こえてくるではないか。居合わせた全員が絶叫した。便槽に赤ちゃんが落ちている!

住民たちはすぐに警察と救急に連絡を取った。だが、へんぴな村のこと、パトカーも救急車もいっこうに姿を現さない。彼らはトイレを壊して赤ん坊を救出することにした。ひどい悪臭、蓄積された汚物、汚れきったコンクリート。最悪な空間の中から新しい命が助けを求めて泣き叫んでいた。

助け出した赤ん坊は、高校の制服と思われる衣服にくるまれていた。遺棄されてからおそらく20時間が経過しているはずだった。生まれたての赤ん坊である。まだへその緒が付いていた。

誰かが産み落としたばかりの赤ん坊を制服でくるんだ後、落とし式便所に投げ落としたのだ。よくぞ便槽の中で溺れなかったことよ。

これは南アフリカ共和国の話だが、日本でもよく似た事件がときどき発生している。ほとんどの場合は、不幸な未成年の母親の仕業である。

現地の警察は、「母親がすぐに見つかることを祈っている」というのんきな声明を出しているが、便器の中に落とすということは殺意があったということになり、殺人未遂になるはずだ。

それにしてもこの世に生を受けたかと思ったら、母の胸に優しく抱かれて授乳されることもなく、この世で最も不衛生で忌み嫌われる場所に投げ落とされるなんて、むごたらしい話である。

しかし、地獄の底のような悪環境で20時間も耐えたこの赤ん坊のけなげさこそを評価したい。汚物と悪臭をいとわずに迅速に的確な方法で赤ん坊を救出した住民たちの暖かさを加味するまでもなく、このけなげさは満点の10に値する。


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