« トランクから人間の腕が・・・《まぎらわしさ7》 | トップページ | 80円カツアゲした十代の少年に懲役22年判決《公平さ10》 »

July 29, 2004

一家惨殺 - 残された彼に射し込んだ明るい光《けなげさ8》

事件の起きた南アの首都プレトリア36歳のクリフ ローストーンは、最初の自殺未遂の後、やはり自殺しようと考えていた。彼は自分のよりどころをすべて失ってしまった。彼は国中を震撼させた殺人事件で婚約者ジェニー、娘ケイラ、母へスターの3人を失ったのだ。彼女たちの死亡状況を警察から聞かされた瞬間、彼は生ける屍と化した。

教会に行くのもやめ、神を信じることもやめてしまった。ほとんど食事を取らず、煙草を立て続けに吸い、酒を浴びるほど飲む日々が続いた。そして、自殺決行への決心を固めていった。

だが、そんなある日、友人のマーク ネルがクリフの家を訪れた。「さあ、引きこもっていないで出かけよう」

マークは拒絶するクリフをなんとか説得して連れ出すことに成功した。クリフには知らせていなかったが、マークはある女性を彼に紹介するつもりだったのだ。

こうして、クリフは10歳下の女性アメリア・コークと出会った。アメリアは、クリフに初対面したとき、3名の命を奪った残忍な殺人事件のことをまざまざと思い出していたという。

その日から、アメリアはクリフの喪失感を埋める存在となった。事件後、わずか半年でクリフとアメリアは式を挙げることになった。たった半年という期間の短さには、周囲から反対の声も多かったが、決して安易に決断したのではないとアメリアは言う。

「家族や友人には、少なくとも2年は待たないと無理だという声が多かったわ」

今、一緒に暮らし始めたクリフとアメリアは、亡くなったクリフの娘とフィアンセのことを二人でよく話しているという。

あんな出来事の後でクリフとの絆を築いていくにあたって困難はなかったのかと聞かれたアメリアは、「今でも、亡くなったフィアンセや娘のことを思い出して切なげにしているときがあります」と答える。

だが、フィアンセや娘の死を悲しむのではなく、彼女らが生きていたことのかけがえなさを二人で積極的に話すことにしている。こうすることで、クリフが喪失感を乗り越えていける。

「クリフは、まだ何枚かの写真をときどき見つめていることがあります。私と彼は、彼女たちのことを話すのです。すると、君は亡くなったジェニーにそっくりだと彼が言ったりします。そんなとき、私が生前のジェニーに会えていたならよかったのにと思わないではいられません」

ジェニーとケイラを生き返らせることができたならと思うことだってあるのだという。二人が生き返ったら、私は彼にとって不要な存在になるかもしれない。それでもかまわないと思う。

クリフはアメリアとの出会いのことをこう言っている。「突然、まばゆいばかりの光が射してきた。彼女を見つめた瞬間にわかったのです」

本件には、何評点をつけるか迷ってしまうが、絶望の淵から這い上がったクリフと献身的にその手助けをしているアメリアの「けなげさ」を8ポイントと評価したい。

ちなみに、既に逮捕されている犯人は、20歳の青年だった。事件の詳細はあまりに残忍でここに書くのは控えたいが、クリフの娘(1歳)は、母親に抱かれた状態で顔面と胸を撃ち抜かれた。犯人は、3件の殺人、2件のレイプ、1件の殺人未遂、1件の強盗、数件の拉致で起訴された。これは南アフリカで起きた話である。

この犯人は死刑にはならない。

南アフリカに死刑はなく、最高刑は無期懲役である。死刑制度が廃止されたのは、多数の政治犯が死刑に処せられた暗黒時代があったことによる。まあ、筆者自身その現場に居合わせたこともあるように現行犯で射殺される犯人も多いのだが。

【7月31日付記】
一人残されたクリフのことは現地のテレビや新聞でも大きく取り上げられていたようだ。日本でもありがちなことだが、メディアへの露出が高くなった被害者や遺族がタレントのようにもてはやされてしまうことがある。クリフもそうした有名人の一人だったようだ。あまり、美談にケチを付けたくはないのだが、アメリアがクリフに惹かれたのには、そういう要素もあるかもしれない。


News sources:

■ IOL - Rawstone: Saved at his lowest ebb by love

■ Anazi News - Kayla's dad: I wanted him dead

当ブログの全記事一覧を見る

2004 07 29 | 固定リンク

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/64306/1959780

この記事へのトラックバック一覧です: 一家惨殺 - 残された彼に射し込んだ明るい光《けなげさ8》:

コメント

コメントを書く