« チューブ状の全天候型自転車専用道路網《ありえる度3》 | トップページ | いくら美味で健康的でも食用に向かない動物《まぎらわしさ評点1》 »

June 26, 2004

博士解放される《不幸中の幸い度5》

SARS virusテロリストたちに拉致され、コンピュータから人に感染するウィルスの開発を強要された山田博士さんは、まだ連中の要求をかなえられずにいた。そもそもコンピュータウィルスを使うより、もっと手っ取り早い方法がいくらでもあるのだ。

コンピュータを何らかの形で使って、何らかの病原ウィルスの感染を促進させたいのであれば、たとえば、次のような方法があるのではないかと、一応、博士さんは連中に提案してみた。

  • 獣、特にイノシシの生肉がダイエット効果抜群だと宣伝するサイトを作り、野生動物の生肉食を流行させ、E型肝炎を流行させる。

    これを実行するまでもなく、一部で野生動物食が流行し、E型肝炎に感染する人がちらほら出始めたし、テロリストたちが望むような壊滅的な結果を招くとは考えにくいので却下。

  • 無料のバーチャルペットソフトを流行させる。何らかのサブリミナル効果により、ユーザーを洗脳してしまい、常軌を逸した行動に走らせる。

    これも、わざわざそんなふうに仕向けるまでもなく、常軌を逸した行動に走る者はひとりでに増える一方なので却下。

  • BIOSレベルでPCに感染し、すべてのハードディスクやDVDドライブなどをめったやたらと回転させ、騒音と熱でユーザーを病気にしてしまう。

    技術的には可能と思われ、夏場には効果的とも思われたが、そもそもユーザーが本当に病気になるかどうか疑わしく、そもそもドライブ類を異常回転させるくらいならPCを故障させる方が早いではないかということで却下。

  • PC自体(電源ユニットなど)に病原ウィルスを仕込んでおき、ある程度の時間使用されると熱で密封が解けてウィルスが飛散するようにしておく。このPCをネットで売りさばく。大量に売りさばく方法としては、有名メーカーの商品の価格を意図的に1桁少なく表示する。

    これは、実現可能性と効果の両面で最も有力な案とも思われた。資金も無理すれば出ないことはない。だがどうやって大量のPCを仕入れるかが一番のネックになった。メーカーも信用のない相手には出荷しないだろうし、いきなり数億ものキャッシュを支払うなんて話を持ちかけても、逆に怪しまれて当局に通報され発覚する恐れがあるということで結局、却下。

いくら脅迫されてのこととは言え、テロリストに手を貸そうとしていることについては、博士さんは何の罪の意識もなかった。どちみち、連中の要求を満たすことなどできそうにないからだ。あまりにも馬鹿げた要求過ぎる。

「ハカセ、あなたの考えていることはお見通しだぞ。いずれ助けが来ると思っているだろう。そのための時間稼ぎをすればいいと思っているだろう」と日本語の達者なテロリストが話しかけてきた。

「ここは日本のどこかでしょう? あなた方が買出しに行くだけでもかなり目立っているはずだ。いずれ捜査がここに及ぶと思いますよ」博士さんは正直に答えた。

「われれだって馬鹿じゃない。もう種明かしをしてしまおう。ハカセは、われわれが開発した生物兵器に感染している。おなたがハカセだろうがなかろうが、コンピュータウィルスの専門家だろうがなかろうが、実は関係なかったのだ。われわれはワクチンを注射しているので大丈夫だけどね」

「感染してるって、私は別にどこもおかしくないですよ。潜伏期間があって、そろそろ症状が出るとか?」

「いやいや、あなたは発症しないよ。そういうふうに設計された生物兵器なのだ。あなたを経由して次に感染した人に深刻な症状が出る。今、逃がしてやってもいい。あなたがセキやクシャミをするたびに、空中に何百万というウィルスが吐き出される。あなたは、スーパースプレッダーとしての使命を自動的にまっとうしてしまうのだよ」

「さては、捜査の手がもう迫ってきているんだな。だから、そんなことを言って、僕を脅そうとしているんでしょ? そもそも、そんな生物兵器があるなら、あなた方がスーパースプレッダー役をすればよかったじゃないか」

「実を言うと、われわれも人体実験の被験者なのだ。ワクチンに本当に効果があるかどうかをたしかめるための」

「なるほど。それならわからないでもない。で、僕をそろそろ解放しようというわけだね」

「そのつもりだ」

「やめてほしい。解放しないでほしい」

「同胞に被害が及ぶの避けたいと思うのなら、ハカセも見上げたものだ。だが、それは出来ない。あなたをこれから東京に連れ戻す」

「イヤだ。警察に捕まりたくないんだ。実は、俺は会社の金融システムを巧妙に操作することに成功し、3億も横領してしまっていて、もう発覚してるに違いない」

「ふふふ」とテロリストは不敵に笑った。「そんなこととっくに調査済みだ。だからお前を拉致したのだ」

「3億円全額ほとんど使わずに貯金してある。全額あんたにあげてもいいから、俺を一緒に連れて行ってくれ」

「どこへ連れて行けというのだ? われわれのアジトがある数カ国のいずれかにか? 馬鹿なことを言うな。お前が現地でウィルスをばら撒くことになるではないか」

博士さんは、しばらく考え込んだ後、口を開いた。「僕を完全に解放するつもりですか? 誰も見張り役をしない?」

「そのつもりだ。われわれがうろうろしてると怪しまれるだろうしな。それとお前が高飛びしようとしていたことも調査済みだ。行き先はやっぱりアメリカか。ふふふ」

「ふーん」と相槌を打った後、博士さんはかすかな声で(間抜け)とつぶやいた。俺が真っ先に自首すれば済むことではないか。そうすれば、社会とは隔離されるのだ。

刑事が俺の言うことを信用するかどうかわからないが、さすがにこのご時世でもあるし、俺はすぐにどこかの病院に隔離されるだろう。被害は最小限にとどめることができるし、俺は刑務所に入らなくて済む。刑事たちも感染の危険を冒してまで、俺を取り調べようとは思わないだろうし。こりゃ、怪我の巧妙というか、いろいろと好都合かも。

というわけで、本件の「不幸中の幸い度」は5点と評価しておきましょう。この5点、不幸とラッキーが五分五分で完全に釣り合いが取れているという意味になります。この記事では、非常に複雑なケースを取り上げてしまいましたが、この評点項目については、これからもっとシンプルな例を挙げていこうと思います。

当ブログの全記事一覧を見る

2004 06 26 | 固定リンク

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/64306/1959858

この記事へのトラックバック一覧です: 博士解放される《不幸中の幸い度5》:

コメント

コメントを書く